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テーマは地域での美術館の多様な社会教育活動と、地域在宅ケア活動とのコラボレーションがテーマです。この両者を繋げるのは、最近改めて評価されつつある狩野芳崖の高弟、高屋肖哲の作品と思想です。芳崖の悲母観音（重文）は、観音1人子1人であるが、肖哲は子1,000人に観音1人の「千児観音」を描き上げました。1観音が千児を救ったのではなく、千児の祈り悲願が1観音を生み出したと考えたいと思います。特にコロナ禍の今、子どもの虐待増、不幸な子と不幸な母も増え、とりわけ在宅療養している障がい児たちの不安は深刻です。こうしたコラボレーションや地域の複数の資源をひとつの目標に向かって連携することは「地域共生社会」創造の血脈と思います。

今回のコラボレーションを繋げた高屋肖哲の生涯は、明治初年、岐阜県から笈を背負って上京し、狩野芳崖に師事し、現芸術大学の第1期生となった。将来を嘱望されながら仏画に専念しつつ市井に埋もれ、寺院に寄寓し、後半は日本美術史から姿を消した。しかし、その業績は最近見直され、千児観音の存在が、現今の社会の混乱、コロナ禍の蔓延するなかで注目されつつある。一方、子どもたちは、虐待、不幸な死、貧困のもたらす苦悩、とりわけ障がい児たちは不安にさらされている。こうした世情に肖哲の千児観音画図は、一筋の光明を与えるのではないかと考えます。